片岡源介(26)(元武士)×中井勝弥(小姓)(18)
◎旅立ち
いらなくなった反古を片付けていた勝弥は、偶然に発見した亡き母の書置きによって、父の敵を知ることとなった。
勝弥は14のとき、殿様が御駕籠から「あの子は」と見初められ、その日から御奉公申し上げる身となったのだった。それ以来、身に余るほどの御寵愛を受けてきたが(とにかくものすごい寵愛ぶり!お姫様みたい)、先月初めごろから、殿の御心は、千川森之丞というものに移ってしまった。
しかし、これも武運の尽きていない証拠。もし御寵愛を受けている真最中なら、敵討のための暇乞いをしても、簡単にはお許しされなかっただろう。勝弥は殿のご機嫌のよいときを見計らって、暇を申し上げ、かねてからの忠実な家来五人をつれて旅に出た。
◎再会
耳塚というところで、勝弥は大男の乞食にであった。顔をよく見ると、かつての朋輩、片岡源介だった。源介は江戸にいた頃、勝弥に執心の手紙を何通も送っていたが、殿の寵愛を受ける身なので、返事も出来ないままでいた。勝弥はふたたび出逢えてうれしいこと、敵討の仔細などを話し、夜を過ごした。
夜が明けて、別れの時がきた。源介は、仕込み杖の刀を取り出し、「これは大原の実盛の二尺三寸である。これで敵を討ってください」といって勝弥に渡した。勝弥はそれを頂戴して、「まもなく敵を討って再びお目にかかります。それまでの形見に」と、差し替えの刀を残して出発した。
◎敵討
勝弥主従は、思い思いの商人に身をやつして近国を探し回った。そして年も暮れた春、ようやく敵の居場所を突き止めて、夜討ちの手筈を決めた。
虎の上刻、主従は忍び返しを切って押し入り、敵にも十分に覚悟させた上で、首尾よく討ち取った。
勝弥主従が、二町ほど逃げた時、村の人々が松明を手に「のがすな」と追いかけてきた。これまでか、と覚悟を決めたとき、「勝弥、逃げ道はこっちだ!」という者がいた。「誰?」ときくと、「源介を忘れたか。まずこちらへ」と言って舟にのせ、川に押し出した。追っ手たちは、源介があらかじめ、橋の中ほどを切り落としていたので、難儀して引き返していった。源介かっこいいじゃんv
◎帰還
舟は夜明け前に脇の浜という所に着いた。勝弥が「昨夜は大事のとき、ここまでおいでくださってお助け頂き、この上もなく仕合せでした」というと、源介は笑って、「つまらないことを申す人だ。別れてから、朝から晩まで影のように従って、昼は世間の様子に目を配り、夜は外から用心を固めてきたのだ」と、いままで勝弥たちが難儀な目にあうのを、こっそりと助けてきたことを語った。
勝弥は源介とともに帰国し、大殿・若殿に敵討の次第を詳しく申し上げると、お二人はお喜びのあまり、源介をお召しになって、三百石御加増の上、役なしに仰せ付けられ、勝弥まで賜った。勝弥は名を源七と改めて、まことの兄弟分となった。「是前代未聞、少人の鑑、こうなふては」
やった~!ハッピーエンド!!なんかもうコメントすることないやv では、名文↓どうぞ。
☆今日の名文☆
(勝弥と源介が再会した夜、今夜は残らず語りましょう、と勝弥が)「ひざ枕をすれば、此時のうれしさ、衆道の事は外になりて、長屋住ゐの東の事をおもひ出し、心の塵を払ひ、十府のすがごも七ふには、君の御寝姿を見て、夢もむすばず」
源介は、膝枕されて、嬉しさのあまりにむらむら~ときたけれども、同じ長屋に住んでいた江戸のことを思い出して、その雑念を振り払い、真心を示した。愛しい人の寝姿を、寝もせず襲いもせず、一晩中見守るなんてなかなかできることじゃありませんよ。(勝弥くん、先に寝ちゃうなんて…そんなところがかわいいぞv)
「十府の~」は、古歌「みちのくの十編の菅菰七編には君を寝させて三編にわれ寝ん」から。
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