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梅色夜話

◎わが国の古典や文化、歴史にひそむBLを腐女子目線で語ります◎(*同人・やおい・同性愛的表現有り!!)

本朝御小姓列伝 六

 お久しぶりです。パソコンがお釈迦になってしまったので、しばらくさみしい日々を過ごしていましたが、新入り(データ移行完了!)とともにこっそり復活させていただきます。

 それにしても、自分にとって、パソコンやネットがこれほど不可欠なものだったとは気がつきませんでした;いなくなって初めて気がつくものなんですね。
 というわけで、御小姓にとって最も大切なものとは?それを失った御小姓は?というお話はいかがですか?

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 石田三成が近臣、小幡助六信世と云ふ者有り。上野国の住人小幡上野介信繁が三男なり。
 立身を心がけ、十五歳の時、上州(上野の別称)より大阪へ登り、諸家の風俗を見聞す。
 其の頃石田は、秀吉公の御寵臣にて、日本一の大名にも、立身せんとの沙汰(うわさ)あれば、三成に仕へ、勤功をはげまんとおもひ、石田が家に知音(ここでは「知人」という意味でしょう)をたのみ、奉公を願う。
 この助六は、勝れたる美童なりける故、三成見て大ひに悦び、忽(たちま)ち召しかかへて寵愛尤も深かりける
 助六は、もとより才智備はり、忠義を専らとする者故に、三成段々とりたて、領地二千石を与へ、近臣の総頭を申し付くる。

 去程に、今度三成、大垣より関東へ出陣するにも、影のごとくに付き従ひ、忠戦したりけるが、三成敗北のとき、助六は敵大勢に隔てられ、三成を見失ふ。
 是によって、数万の敵陣を切りぬけ、主人を尋ねけれども、其の在所知れざれば、石山辺へのがれ行く。猶三成を覚束なく思ひ、彼方此方を尋ねける。

 其頃家康公は、江州大津の駅に御陣を居られ、今度謀反の張本人・石田三成、戦場を逐電し、其行方しれざれば、諸大将に仰せ付けられ、治部少輔(=三成)を捜されけるに、
 石山辺の郷民の内、かの助六を見知りたる者有りて、大勢をかたらひ、助六がしのび居たる家に、夜中にわかに押し込み、難なく生け捕り、大津の御陣へ連れ行き、
 「この者は石田殿の近臣なり。三成の行方お尋ねの為と存じ、搦め捕り候」
と申し上げる。
 家康公聞こし召され、神妙のよし仰せ出され、黄金二十枚、彼の郷民共に下されける。

 その後件の囚人を御前へ召して、三成が行方を御直に尋ね給ふ。
 助六、庭上に跪(ひざまず)き、ちっとも臆したる気色なく、つつしんで申し上げるは、
 「某は石田三成が家来、小幡助六と申す者なり。治部少輔が居所をよく存知候へども、年頃身を安楽に置きし事は、悉(ことごと)くみな主人三成が恩顧によるところなれば、今更其厚恩を忘れ、主人の在所を申し上げん事、勇士の本意にあらず。この上は、拷問を仰せ付けられ、その後首をはね給ふべし。」
と、憚るところなく申し切りて、二度お答へをも申さざりければ、家康公聞こし召され、
 「忠義武勇を兼ね備えたる士なり。尤も精兵と謂ふべし。治部少輔が行方をしるならば、主人の先途を見届くべきものなれども、しらざる故に別離せしならん。
 たとひ三成が在所を知りたりとも、この者に於いてはいふべからず。何ぞ拷問に及ばんや。凡そ大将たらん輩は、かかる忠臣は憐憫(れんびん:情けをかけること)して置くべき事なり。
 早く彼がいましめの縄を解きて、その死刑をなだむべし。」
とのたまひ、忽ち赦免を蒙(こうむ)りぬ。

 助六、御前を退出しけるが、それより近辺の寺院へ行き、住持の僧に対面して語りけるは、
 「某、石田殿の家人小幡助六と申す者なり。敵に生け捕られ、既にちゅうせらる(殺される)べきところ、不慮に一命をたすけられ、此処まで来たり候ひぬ。
 しかれども、いささか思ふ仔細あれば、ここにて腹を切べし。死骸をかくしてたまはれ。」
と云ふ。
 住持驚き、しばらく抑留せんとひしめきけれども、力に及ばず忽ち自殺しける故、かの僧、大津へ赴き、右の次第(今は上ですね;)を言上しければ、家康公其皆を聞かせ給ひ、甚だおしませ給ひしとかや。


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 冬休みスペシャルで文章が長いです;ここまでお読みくださった方、お疲れ様です。

 助六くん(いや、"さん"かな?小姓というより近臣ですし)の三成殿を思う愛の深さ…、感心しますね。そしてその大事の主人を失った不安・焦り・悲しみ…。強がってはいても、その目の奥で震える心を、家康公は読み取ったに違いありません。
 なんといっても、取り立てられる前から、この人にお仕えしよう!!と心に決めていた人と、目の前で引き裂かれてしまったのですからね。
 「三成を覚束なく思ひ…」の、「覚束ない」という言葉には、「不安だ」という意味のほかに、「逢いたい」という意味もあります。そう思うと健気さ倍増vv

 一度は捕らえられた助六くんですが、許されて生き延びることができました。にもかかわらず、すぐに自害してしまったのはなぜなんでしょうか。武士として、辱めをうけたから?それとも、魂となって愛しい主人に逢いにいくため?助六くんの思う仔細って、なんだったんでしょうね。

 さて、これほど一途に思われていながら行方をくらましたままの殿・三成さんですが、彼も美少年好きだったとは、意外に初耳でした(私だけ!?)。美童を、「見て大いに悦び」、「たちまち召し抱えて寵愛」するなんて、あからさま過ぎるぞ!!
 っと叱ってやりたいところですが、彼は歴史において、わが故郷をすこ~しだけ有名にしてくれたお方の一人なので、許しますv
 ここから見えるあのお城にも、二人がやってきたのかしら…そしてねんごろ…(戦後の再建だけど;)と妄想する郷土偏愛者です。
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