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梅色夜話

◎わが国の古典や文化、歴史にひそむBLを腐女子目線で語ります◎(*同人・やおい・同性愛的表現有り!!)

5年目に突入しました。(謡曲『花丸』 前編)

 4ヶ月ぶりです。こんにちは。全然更新していませんでしたが、このブログもついに5年目となりました。これからもBLな古典や故事を少しでも楽しく分かり易く、そしてより多く紹介していけるように頑張りたいと思います。
 
 ところで。余談ですが、私は最近、N○Kで火曜深夜に放送中の、『タ/イム・ス/クープ・ハ/ンター』という番組にハマっています。これは、某社の特派員(かなめじゅん)が、様々な時代にタイムスリップし、当時の人に密着して、その仕事や営みを取材する、という趣向のドキュメンタリー風ドラマ&歴史教養番組(?)です。
 で、何が面白いかというと、当時の人々の格好がリアルなこと! かつらに見えない月代や、正しいふんどし姿がたくさん観られて最高です。それから、二回に一回は死人がでたり、死体が出たり、えげつない傷跡が出てくるところ! すべてモザイク処理されているのもツボです。あとは、タイムスリップや当時の人々との交渉に用いられる科学技術が空想科学的なところも、理系としては楽しいポイント。
 ご存知ない方は、ぜひ見てみてくださ~い!

 ではここから本題。今回は、個人的に好きな室町時代から、『花丸』という謡曲をご紹介します。
 とってもテンプレなお話なので、ちょっと飛ばし気味でいきますよー。


◎謡曲『花丸』

 「千里を歩む道までも、一足や初めなるらむ」
 常陸の国・筑波の何某の子、花丸は、いまだ都を見たことがなかったので、"めのと(養育役の男性)"の清次を召し連れて、今まさに都に上ろうとしていた。ほのぼのと日の明ける頃、常陸を出て、都の空に向かって行くと、四方の山々が興味深げに見える花の都へと着いた。

 「急ぎましたから、もう都へ着きました。心静かに洛外までも一見したいと思います。ああ、面白い」
 花丸たちは、都の各所を見回った。(←謡が入ります。)

 「ねえ、清次」
 「御前に候」
 「洛陽の名所旧跡を残り無く一見している間に、これから八瀬大原に向かって、叡山に参詣してから帰ろうと思い立ちました。道筋を尋ねてきてください」
 「かしこまりました」

 「ではあそこの御僧に。聞きたいことがあります」
 「わたしのことでございますか。なんでしょうか」
 「叡山へ行く道を教えてください」
 「それは安きこと。愚僧も北谷の者でございますから、御供申し上げましょう。それで、あなた方はどこからどこへとお行になるお人でしょうか」
 「我々は、東国の者でございますが、都から叡山に参詣しようとしているところでございます」
 「それでは同道申し、道すがらの旧跡をお見せ致しましょう」

 「あのう、あそこに人影がたくさん見えますが、何をしているのでしょう」
 花丸が尋ねると、僧が答えた。
 「あれはこの八瀬大原の里人でございますが、賤(しず)の営みに木を伐って背負い、洛中で商いをするのでございます。道すがら小唄を歌っていますので、所望してお聞かせいたしましょうか」
 「それは素晴しいこと! ぜひ聞かせてください」
 「わかりました。 おーい里人たちよ。いつものように歌ってください」
 (人々が歌って聞かせる)

 「面白いものをお聞かせいただきました。 さて、叡山はどこにあるのですか」
 「この峰の上でございます。もう少しお急ぎください。これが根本中堂、薬師横川如意ヶ嶽、山王八王子大宮の御在所、波止土濃まで見えます。よくご覧ください。」

 「やや、はや日も西山に傾いておりますので、御暇申し上げます」
 「待って下さい。この土地には不案内ですので、一夜の宿をお借りしたいのですが」
 「それならば愚僧の庵室へお連れ致しましょう」


 「今宵のお宿、返す返すもありがとうございました。それから、都では歌連歌の道をたしなみ、稚児若衆に至るまで、俳諧というものを愛好しているということを聞きました。御存知ならば教えていただけませんか。本国への家土産にしたいと思うのです」
 「これは思いもよらないことを承りました。自分の所作さえ満足に勤められないのに、俳諧の詳しいことなど知りません。とはいえ、少人のお心ざしがあまりに愛おしく思われますので、ざっとお話申し上げましょう」
 (僧は俳諧の解説をする。)
 
 「歌には師匠はありませんから、古きをもって改めます。種は心とお思いください。常に嗜んでいてください」
 「うれしゅうございます。ああ、なんて面白いことなんでしょう。今日からあなたを師とお頼み申します」
 そこへ清次が、
 「申し上げますが、もはやお帰りなさいませ」
 花丸は、
 「本当に、故郷に帰ることを忘れていました。師匠に申し上げます。もはや御暇を申し、故郷へ帰ろうと思います。ああ、お名残惜しくございます」
 「仰ることはもっともですが、憂きもつらきも世の習い。私も名残惜しく思いますが、月を重ねてお待ちください。もとより出家の身ですので、やがて罷り下って御目にかかり申しましょう」
 「それは誠ですか」
 「もちろんです」
 「ああ、恨めしいこと…」
 そういってすがる袂を引き離し、花丸は僧と別れた。(つづく)



 ** 直後の記事につづきます。**

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