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梅色夜話

◎わが国の古典や文化、歴史にひそむBLを腐女子目線で語ります◎(*同人・やおい・同性愛的表現有り!!)

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『松帆浦物語』 その一

 あぶない! 2月は短いんだった;
 お久しぶりです。今回は稚児物語第三弾!! 『松帆浦物語』であります。

 『松帆浦物語』は、『秋夜長物語』『鳥辺山物語』につづく稚児物語だそうで、登場人物やストーリーも過去の作品を踏襲した感じになっています。ということは、ラストもそんな感じになるわけで……。
 しかし、パターンの中にも個性あり。過去の2作と比べながら読んでいただくと面白いかなぁと思います。

  過去の2作はこちらでどうぞ。
  『秋夜長物語』 → ■ (本ブログ姉妹HPに飛びます)
  『鳥辺山物語』 → ■ (本ブログの過去記事)





◎『松帆浦物語』 その一

 遠くはない世のことでしょうか、四条のあたりに、中納言で右衛門督(うえもんのかみ)である人がいらっしゃった。中将殿という御子がいらっしゃったが、独り子なのでさみしく思っていらっしゃった。しばらくするとまた御子がお生まれになった。老い先がみえて姿が非常に美しくていらっしゃるので、この上なく大切にお育てになった。
 しかし父の卿がお亡くなりになってしまった。頼る方のないようにいらっしゃるので、中将の君は弟君をたいそうお可愛がりになり、十ばかりまでお育てになった。

 そのとき、横河(よかわ:比叡山の一)に、禅師の房という彼らの叔父にあたる人が住んでいた。そして中将に言った。
 「この若君をいたずらにご成長させるよりは、山に登らせて勉学を習わしなさってはいかがでしょうか」
 このように度々勧めるので、兄の中将は弟君を横川へと登らせなさった。


 横川では、若君は大方の学文にも和歌の道にも心を入れて(熱中して)、筆の取り方もしかっりとしている。ちょっとした遊びにも似つかわしく、心も人に優れていたので、一山から寵愛され、また共に学ぶ稚児たちからも親しまれ仲良くしていた。

 そうしているうちに三年ほどたった。これほどの間この山に住まわせているので、この母君は「久しく見ぬは悲し」と言って、折々若君を里へお呼びになった。
 あるとき禅師が申し上げた。
 「若君は学問の方も聡く賢いお方です。このまま法師にさせて、父の御跡を弔わせなさってはいかがでしょう」
 禅師は熱心に語るのだが、母君は、
 「惜しい姿を墨の衣にやつしてしまうのも情けがないし、雲のように遠いところへやってしまうのもかわいそう……」
などと仰り、納得した返事もなさらないので、仕方がなかった。

 その後は不安に思われたのだろうか、母君は若君を京に住まわせることを中将にもご相談なさった。兄君も母君のつれづれのお慰みにもと思われたのだろう、同じようにおっしゃるので、禅師も仕方なく、泣く泣く若君を京へ送った。
 若君も横川に住みなれていらっしゃったので、ひっそりとした山水にも名残が多く、日ごろ一緒に遊んでいた稚児たちとも離れてしまうことが悲しかった。みな京近くまで見送り名残を惜しんだ。
 さて、禅師が山へ帰り、若君が年月手習いなどをして住んでいらっしゃったところを引き開けてみると、たいそう美しい筆跡で、障子(ここでは襖のこと)に書き付けられていた。

 ここのへに立ち帰るとも年をへてなれし深山の月は忘れじ (ここのえ=宮中)

 これを見て、禅師や一山の者はみな涙を流した。


 その後、若君は元服して藤侍従(じじゅう:天皇の近侍)と名乗りなさった。上げ劣り(元服で髪を上げたとき、以前より劣って見えること)もせず、ますます驚くほどの美しさでいらっしゃる。
 十四におなりになった春のこと、以前親しくなった横川の法師や京でも殊に雅な男たちが大勢やって来て、
 「北山の桜は今が盛りだと皆が言っています。侍従の君もご覧になってください。お供いたしましょう」
と、口々に言うので、深山隠れの色香も殊にゆかしく思われて、にわかに思い立った。
 道中も人目が気恥ずかしいので、若君はわざとやつして(変装して)いらっしゃった。若者たちは馬を並べて道すがら眺め渡せば、遠き山の端はそこはかとなく霞みつつ、野辺の景色は青みがかっている。芝生の中には名も知らぬ花々がスミレにまじって色々に咲いている。雲井の雲雀が姿も見えずさえずりあっているのも、言葉にならないほどだ。目指す山はやや深く入ったところで、水の流れ、岩のたたずまいも、うつし絵(写生の絵)を見るように思われた。


 うち吹く風にそことなくにおいくる香りに、あこがれ急いで登ると、数知らぬ花たちが枝もたわむほど開いて、「今日こなければ二度と見れないだろう」と思われるほどだ。山隠れとも言えず、都の人と思われる人々が大勢集い来て、木の本、岩隠れの苺に群れながら歌を歌い、酒を飲み、さまざまに遊んでいる。
 侍従の君は花に眺めいっていらっしゃったが、花よりもこの君に目を止める人が多く、後を慕って歩く者がいるのも困るので、どこか引き入ったところで花も眺められる場所はないものかと願い求めていると、本堂の傍らに院家であろうか、檜皮の軒は朽ち、忍草が所得顔に生え、破れた御簾のかかった家がある。連れの中にここを知っている人がいたので、しばらくここに留まることにした。
 短冊を取り出し、歌を詠んだり、京から持ってきた檜破子(ひわりご=弁当)や小筒(ささえ=酒などの入った竹筒)のようなもの、旅のまかないなどを食べて遊んだ。

 そのとき、花の下からはじめより、侍従の君に心をとどめて見ていた法師がいた。容姿のよい三十ばかりの男で、この御簾の許まで慕い来て、花には心をとどめず、この君の面影に眺めいっていたのだ。
 この御簾の中にまで駆け入りたい様子が、なんとなくわずらわしいので、供の男を外へ出して告げた。
 「人目を避ける故あってこのような隠家を探したのだ。狼藉者め」
と、荒々しいほどに制するので、法師は力なく出て行った。

 しばらくして、十二、三歳ほどの童がやって来た。美しく着飾った童は小さい花の枝に結び付けたものを、取次ぎもせず御簾の中に差し入れた。取って見ると、

 夕かすみ立へたつとも花の陰さらぬ心をいとひやはする

と、上品な字で書かれていた。
 童は「お返しを」とこの君に勧めるが、「恥ずかしい」と言って隣の人に譲った。それを「お情けのないこと」と言い勧めると、

 花に移る眺めをおきてたが方にさらぬ心の程をわくらん

とほのかに書いて差し出しなさった。後にこれを見た法師は、限りなくうれしく思い、涙をこぼした。

 さて、この法師の素性を問うと、童はためらっていたが、様々に言われて、とうとう
 「それでは、岩倉の某の坊に住む、宰相の君という方でいらっしゃいます」
と答えた。


 この宰相は、思いだけをしるべにして、あの若君を訪ねようと思った。花の下で見た面影は身に寄り添って、命も絶えてしまいそうなほどだった。
 ある時、宰相は便りを求めて文を送った。
 「あの日花の下で見るともなくあなたを眺めたときから、まだこの身に帰ってこない私の魂を、いつまでお袖の中にとどめていてくださるのでしょうか。あの時のことをまたいつか……」
などと細やかに書いて、

 花のひも解くるけしきは見えずとも一夜は許せ木の本の山

と送った。その返しに、

 木の本を尋ねとふとも数ならぬ垣根の花に心とめしな


 このようなことをきっかけにして、宰相は夜な夜な角にたたずみ愁苦辛吟した。すると若君もだんだんと哀れに思うようになったのだろうか、心解けゆくように見えた。しばしば屋敷に参り、後には岩倉にある坊まで連れて行き、日の過ぎるほどに心が通い合うようになった。(つづく)





 長々とすみません。あと敬語使ったり使わなかったり、使い方おかしかったりですみません。敬語むづかしー>< (原文ママのところもあるんですよー、と言い訳)


 では、初回なので登場人物紹介で、ストーリーをおっていきましょう。
 主人公は、藤の侍従の君。やんごとなきお生まれで、美しく聡明、同年代の子からも好かれているなんて、理想の美少年です。「侍従」は天皇のお小姓みたいな職業らしいんですが、働いている感じは一切しないですね。
 そんな若君(14)に一目惚れした法師、宰相の君。三十路のイケメンって設定も、いままでの稚児物語の流れですね(男性的に燃える設定なのだろうか…)。桜の木の下にたたずむ若君に魂を抜かれた思いの宰相さんは、ストーキングの上、のぞき、勝手に手紙出す、自宅付近をうろつく、という法で規制されんばかりの行動に出ます(実際、若君のお供の方に叱られてますが)。しかし押して押して押しまくる戦法に、若君もついに落ちた! そうして二人の交際がスタート。若君の屋敷へ行くだけでなく、自分の僧房に連れて行くなんて、今回はかなり大胆で手の早い攻めサマですね。つーか、和歌に「一夜は許せ」って、ストレートすぎるやろ。引くって! ワタクシが若君の身内なら、絶対やめとけって言います。

 それから今回は、若君の家族がイイ味出していると思います。お父さんが早くにお亡くなりになり、母と年の離れた兄弟という設定もなかなかですが、お母様は極度の寂しがり屋、そしてBLセオリー通りのブラコンお兄さん! お兄さんが弟の交際に対してどのような反応をしたのかが気になるところです。
 気になるといえば、花見の院家で宰相さんからの手紙を渡しに来た童です。この子は宰相のお稚児というか弟子みたいな子なんでしょうか。(今までの経験上、年と容姿が語られたキャラは重要人物なコトが多いんですが果たして……?)


 こんな彼らがどんな運命をたどるのか、お楽しみに~。(更新はたぶん来週くらいには……)


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