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梅色夜話

◎わが国の古典や文化、歴史にひそむBLを腐女子目線で語ります◎(*同人・やおい・同性愛的表現有り!!)

重陽企画◎唐土佞幸伝説 其の四・五 

 えー今までこの企画で取り上げてきた方々は、古来の衆道の例として、さまざまな古典文学(無論BL)に紹介されているわけなんですが、その証拠として、かの『男色大鑑』の一文を引用したいと思います。

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 されば若道のふかき事、倭漢に其類友あり。衛の霊公は弥子瑕に命をまかせ、高祖は籍孺に心つくし、武帝は李延年に枕を定めたまふとなり。
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 このあと「我が朝にも……」と続いて、日本の歴史的に有名な方々の例が述べられるんですが、今回は、上の文章の最後に登場した李延年の伝説を見ていこうと思います。


◎李延年(りえんねん) ~『漢書』評林巻之九十三 佞幸伝第六十三~

 『李延年中山の人。身及び父母兄弟皆故の倡なり。……』

 李延年は中山(河北省)の人である。自身と父母兄弟はもともとすべて、倡(歌い手・楽人)であった。
 延年は法にふれて、腐刑(=宮刑)に処せられ、狗監の中(天子の犬をつかさどる役所)に仕えた。
 そのうちに、延年の妹が武帝(在位BC.141~87)に気に入られ、李夫人と号するようになった。延年は外戚となった。
 延年はよく歌い、新しく変わった音楽を作った。
 このとき武帝は、天地の祭祀を盛んにし、音楽をさせようと思っていた。そこで司馬相如らに命じて詩をつくらせた。
 延年はすぐに武帝の意を理解して、作られた歌詞に弦楽器用の歌をつけ、新しい曲を作った。

 そののち、李夫人は昌邑王を産んだ。
 延年はこれによってさらにその地位を高くし、協律都尉(音楽をつかさどる長官)となった。また、二千石の印綬(身分をあらわす組みひも)を身に付け、帝と共に起臥した。その寵愛は韓嫣(かんえん*)と等しいほどだった。
 ずいぶんと後になってから、延年の弟が中人(官女のことらしい)と密通し、その出入りも傲慢であった。
 李夫人が死ぬと、延年に対する帝の愛もゆるみ、帝はついに延年兄弟を捕らえ、誅殺した。





 武帝さま、何どんぶりですか、これは! 「兄」も「妹」も萌ワードではありますが、食べ合わせ的にはどーなんだ!?
 まあ、延年は音楽の才能があるので良いのですが(『史記』には妹も舞の名手であると書かれている)、弟は素行が悪いですね。延年は愛されるのも憎まれるのも「とばっちり」、ちょっとかわいそうです。
 しかし延年は、以前に宮刑、つまりアレを切られる刑に処せられています。コレは死刑に次ぐ重い刑だそうで、一体何をしでかしてしまったんでしょう!? 謎が残ります。
 
 謎ついでに小さな疑問があります。佞幸にまつわる話は、先にも述べたように『史記』にも同様の内容で書かれています。その訳文では「延年の弟が官女と密通し」とあるのですが、『漢書』原文では「中人」となっています。
 そこで「中人」を漢和辞典で調べてみると、「天子のそばに仕える人」とか「宮中の奥向きの仕事をする人」などとあり、どこにも「女」とはありませんでした。 ああ、また深読みしてしまう?

 
 さて、本文中に出てきた「韓嫣(かんえん)」についてもご紹介しましょう。
 韓嫣は李延年と同じく武帝に愛された士人です。
 嫣は武帝が幼いころから勉学をともにし、親愛し合っていました。(『武帝膠東王爲る時、嫣上とともに書を学び相愛す。』)
 武帝が太子→帝と成長してもその仲は変わらず、韓嫣は騎射や兵法の腕を持って尊重され、起臥も常にいっしょでした。
 ところが、武帝の弟や皇太后(武帝の母)からの愛憎やらなんやらがからんで、韓嫣は皇太后から死罪を命じられます。武帝は韓嫣の命乞いをしましたが、許されずに死んでしまった、ということです。

 幼なじみーーーー!! なにこの萌設定。
 一緒に勉強していたところからすると、年も近いんでしょうか。となると、まさか「武帝受け」なんてコトも……;
 武帝の在位が長いこともあり、彼の亡くなった時期と延年が現れた時期が不明なので、同時に愛されたのかどうかわかりませんが(この場合「上とともに起臥す」はどーなる?あぁ、3…)、さらに注目すべきことが!!
 韓嫣が死んだ後、武帝にはまた別の寵臣ができました。名前は韓説(かんえつ)。
 韓嫣の弟でーーす。武帝よ、どんだけ「兄弟」好きやねんッ!!
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コメント

「唐土佞幸伝説」について

はじめまして。
私、「李延年」命、宦官好き、中国史好き、教科書に書けない歴史大好きのsenと申します。昨年後半にこちらのブログで、私の一番好きな佞幸列伝(李延年)についてのこの記事を発見し、それ以来ちょくちょく拝見しております。他の記事も大変面白く素晴らしいです。私の友人にも古典的な男色好き(江戸物が好き)の者がおり、こちらのブログを教えました。記事を楽しみにしておりますので今後も頑張ってくださいね。(^^)/

  • 2009/01/08(木) 19:45:38 |
  • URL |
  • sen #-
  • [ 編集]

senさんへ

はじめまして! お返事遅くなり申し訳ありません;
日本の男色古文の前書きには、必ずと言っていいほど中国のエピソードが紹介されているので、中国関係にも興味あります!マイナー事件は探すのも大変ですが、見つけたときの喜びは大きいですよね。
これからも節操なく萌えでおもしろい男色古典・男色歴史を捜していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

  • 2009/01/10(土) 13:56:02 |
  • URL |
  • 管理人 #81.nEab.
  • [ 編集]

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