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梅色夜話

◎わが国の古典や文化、歴史にひそむBLを腐女子目線で語ります◎(*同人・やおい・同性愛的表現有り!!)

男色大鏡 其の五

 東の伽羅様 巻二の(四)
 伴の市九郎(津軽町人)×小西の十太郎(仙台町人)

◎香りに一目惚れ
 仙台城下に小西の十助という薬屋があった。その暖簾の隙間から、一炷(ひとたき)の香の薫りがもれてきた。市九郎は通りがかりにその高貴な余香を聞いて、その香を袖に留める人を慕わしく思い、店先に立ち寄った。「奥から聞こえるあの香木をいただきたい」と言うと、主人は「倅がたしなんでいる伽羅ですから、それは思いもよりません」とつれない返事をした。それを聞いて、ますます恋焦がれて、しばらく店先で休んでいた。

◎粋な姿に一目惚れ
 市九郎が、江戸を目指しているのは、今堺町で評判の出来島小曝(できしまこざらし:歌舞伎の若衆方のち若女方)に恋焦がれ、若衆買いをせんためである(かなりの衆道好きだ)。田舎にはまれな身のこなしの人であった。
 この市九郎の粋な姿を、十太郎が見初めて、「私が今若衆盛りだといっても、あと五年も続くわけではない。今まで数百人から恋文をもらったが、開いてもみなかった。人々から情け知らずだといわれたのも、気に入った兄分が見つからなかったからだ。今の男がもし私の心を不憫と思ってくれるなら、命がけで懇ろしたい」と、にわかに口走って乱心した。乳母が「今の旅人を呼び戻して、お願いどおりになさったら」というので、十太郎はしばらくは心を落ち着けた。
◎夢の契り
 親は「十太郎は情けをわきまえ、思慮もあるのに、これほど取り乱すのは深い縁があるのだろう」と、不憫に思っていろいろと手当てしたけれど、往診ごとに脈が弱り、薬も効かない。もうだめだろうと、いよいよ死の訪れを待つ時に及んだ。
 そのとき、十太郎は自ら頭をもたげて、「うれしい。あの思う方が、明日必ずここをお通りになる。それを絶対に引きとどめて逢わせてくれ」といった。
 戯言だろうとは思いながら、人を待たせて置くと、本当に市九郎はやってきた。早速家に案内し、父親が仔細を話すと、市九郎も涙を流し、「十太郎にもしものことがあったら、私も出家となって跡を弔いましょう。まずは病人にあって、この世のお別れを」と言って、枕のそばに寄ると、十太郎はたちまち元気な姿に戻って、市九郎に思っていることを残らず語った。
 「私の体は家に残り、魂はあなたの行く先々に付き添って、人にはわからない幻の契りを交わしました。中尊寺の宿坊で、一夜を明かされましたね。そのとき旅の夜着の下に恋焦がれて、物言わぬ契りをこめ、左の袂に伽羅の割欠を入れておきましたが、それは?」と訊くと、市九郎は「ここにあります」と取り出した。「今の話でこれまでの不審が晴れましたが、やはり不思議だ」と言うと、「証拠をお見せしましょう」といって、香木の欠片を取り出した。つなげてみると、ぴったりと一致し、炷いてみると同じ香りがした。
 前世からの縁も深いのだろうと、二世までもと深く契約して、市九郎は十太郎を貰い受け、乗懸馬(のりかけうま)二匹の足音もいさましく、津軽に下っていったということである。

 
 今回は珍しく町人同士のお話でした。しかも正真正銘ハッピーエンド!これから二人はどうやって暮らしていくんでしょうか。ふたりの新婚生活を妄想しましょう。
 しかし十太郎くんはすごいですね。モテっぷりがすごい。城下中の人から狙われているのねvそれ故自信もすごい。しかも大胆だ。これは魂だったからかな?親も、やっと産まれた跡取り息子を、一、二回会っただけの男にあげていいんだろうか。本人がいいならいいけどさ。
 それから今回は、衆道の専門用語みたいなのもちらほら出てきました。歌舞伎役者のことも(知っている方多いかとおもいますが)やっていきたいなぁ。

 ☆今日の重要語句☆
 伽羅(きゃら)
 香木の一種、沈香の最上種。日本では、もっとも珍重された。
 良いものを褒めて言うときにも使う。
 伽羅香に限らず、美少年はなんかいい香りがする。
 これがこの世の常識だ!!

 
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