そしてこのブログも4年目に突入です! 3年もこんなことやってたんですね、ワタクシ(←毎回言ってますね;)。途中から更新頻度ががっくり落ちましたが、男色文学に懸ける愛は常に燃えたぎり続けています!
さて、そういうわけなので何か特別なことでもやろうかなぁと思ったのですが、大体毎回「春」になっているので、今回はマジメに行きます。
今回は謡曲『花小汐』です。いちおう去年手に入れた資料の中でもかなりレアな方に入るモンかなぁと思うので、これで。というのも、図書館で探して「なかなか見つからないな~」と思ったら、背表紙がはがれ落ちていたという……。一冊一冊確かめて良かった。あきらめなければ夢は叶う!
そんな感じでようやく見つけた『花小汐』。春にぴったりの桜にまつわるお話です!
謡曲、つまり能の脚本ですので、
人名「せりふ」
という構成になります。謡の部分はそのままだったり(√で代用)、地の文に直してみたりです。
◎謡曲『花小汐』
社人(神社に仕える人)
「私は大原野(現・京都市西京区)の明神に仕え申す神職の者です。それにしても今年は神前の桜がいつにも増してすばらしい。これは堅く禁制(桜を取ることを禁止する)を申し付けなければ……」
大勢の都人
「花に移ろう峯の雲……。それはこんな心なのだろうなぁ」
忠広
「私は都に住む忠広の某という者です。大原野の花は今が盛りだと承ったので、少人(稚児)に御供申し、ただ今大原野に急ぐところです」
√面白や、いづくはあれど所から、花も都の名にし負へる、大原山の花桜。今を盛りと夕花の、手向けの袖も一入(ひとしお)に、色添ふ春の時を得て、駒も数ある大原や。小汐の山(小塩山=大原山の別名)に着きにけり。
忠広
「急いだので早くも小汐の山に着きました。心静かに花を眺めましょう」
稚児
「いかに忠広」
忠広
「御前にございます」
稚児
「あの花一本(ひともと)折りて来たり候へ」
忠広
「かしこまりました。
社頭へ申し上げます。あの花を一本賜わりください」
社人
「そのような簡単なこと、差し上げたいとは思いますが、今年は桜を折ることは堅く禁制となっておりますので、お受けすることはできません」
忠広
「禁制は禁制ではありますが、少人の御所望です。ぜひ一枝差し上げてください」
社人
「少人の御所望であっても、承知しかねます」
忠広
「惜しみなさるのはもっともですが、"見てのみや人に語らむ桜花、手ごとに折りて家土産(いえづと)にせむ"という歌(古今和歌集、素性法師の歌)もあります。ですからどうかただ一枝だけ、お許しください」
社人
「いいえ、できません。落花狼藉の人は決して逃しません」
√花も小汐の神慮(かみごころ)。花ゆえ身をば捨つるとも、折らるることは有るまじ……
社人たちは各々に太刀を取り直して立ち向かった。都人(忠広たち)は社人たちの花を許さぬという争いに、少人の御為にはよくないだろうとお思いになり、
「恐れたわけではない。今日は見逃すが、明日はこの花を雪のように散らしてやろうぞ」
と、罵り捨てて帰っていった。
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