例年のごとく、しばらく更新休止します。8月復活予定です。
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さて、後日談です。
(前回のあらすじ)
嫉妬深い念者・栄山は、若衆・浅之助が時右衛門と同座したことに腹を立てて、浅之助を刺殺、自らも命を絶った。
ある夜、両親の夢に、浅之助が在りし日のままの姿で現れた。
「私は思いがけず刃にかかり、早くこの世を去りました。本来永らく悪趣(地獄など)に堕ちるべきところを、幼いころから地蔵菩薩を信じ、殊に七七日の弔いの功徳により、またこの世に生をうけることになりました。
来る霜月十一日に、西近江絹川村の角兵衛という百姓の男子として生まれます。
また、栄山は幼少から釈門に入りながら、仏道にうとく、婬行を専らにし、罪のない私を害した報いにより、衣魚(しみ)という蟲に生まれかわります……」
そういうかと思えば、夢は覚めてしまった。両親は驚き、夢を語り合ったところ、ふたりの見た夢には少しの相違もなかった。
そこで絹川村に行き、角兵衛を尋ねると、先日男子を平産したということだった。
両親が角兵衛へ事の次第を語り、生まれた子を見ると、わが子浅之助の幼い時の面影に、すこしも違うところがない。両親は角兵衛にむかい、
「この子はやはり、わが子の再来です。どうか我々にゆずってください。ほかに子供もいないので、この子に跡を継がせたいのです」
と言った。角兵衛も、
「終始お話を聞いたからには、どうして辞退しましょうか。そのうえ、わが子供たちは大勢いますから、お譲りいたしましょう」
両親は大いに喜び、子供をもらって、浅次郎と名付けて養育したという。
さてその後、三形時右衛門の家に、大きさ一寸ばかり(約3センチ)の衣魚が多く発生し、衣類書物はいうまでもなく、器財(器・道具類)までも蝕んでいた。
取り捨て取り捨てしたけれども、日増しに数が増え、害をなすことがおびただしくなった。
この蟲こそ、松巖寺の栄山の一念であろうと、誰ともなく言うようになった。時右衛門は難儀して、ある僧に頼んで事情を説明すると、この僧は、一紙に文を書いて言った。
「茲(ここ)に蟲あり、衣魚と名づく。其の形魚に似て其の尾二岐に分かれるゆえ、白魚・蛆魚・壁魚の名あり。日増しに子孫を育長し、仏経書籍を食い破ること、仏法僧の讐敵なり……。
汝は釈門のし徒、なんぞや男色にまよひ、咎なき人を殺し、其の身も白刃の上に伏して此の蟲となる……。
人のにくむところ、世のいましむる所、早く心を改め正道に赴き、生を転じて真元に帰れ」
読み上げると、これに感じたのだろうか、数万の衣魚は一同に死んだという。
数万の虫がいっせいに死んで……、ああ、その後の光景は想像したくないッ!!
今回一番の被害者は時右衛門さんでしたね。虫は最強最恐のいやがらせです; そういえば、以前も死後虫となって復讐しにきた僧がいました→■。うう、悪寒が……。
かわって前回の被害者・浅之助くんは、ちょっぴり救われましたね。まさか生まれ変われるとは!!
しかし、ご両親の夢の中で語った栄山の実態というのはヒドい! 浅之助くん、この人のどこに惚れたんだ!? だまされていたんでしょうか……。
そいうえば、時右衛門さんは、生まれ変わった浅之助くん(浅次郎)についてはどう思っているのでしょうか。十数年後、昔と変わらない姿のままの浅之助くんを見て、また心動かされたりするのでしょうか。(しかしその時の年齢差、20は越えてるはず……)
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