服部新五郎遁世捨身 巻の五
服部新五郎(上杉家家人)×名草徳之丞(14→17)
上杉憲政(のりまさ)の家人、服部新五郎は、能書家で、和歌を好み、情けの深い武士であった。色を好むことはなく、「心の合う人がいれば、契りを結んで、後の世までも心を離さないでいたい」と思っていたので、まだ妻もいなかった。
久我の住人に名草徳大夫という、気立ての優しい男がいた。その息子の徳之丞は14歳。田舎の子とはいいながら、見目美しく育ち、心やさしく、立ち振る舞いも上品であった。
新五郎はこの子を見初めて、なんとかして縁を求めて近づいた。手習いの指南に通じていたので、徳之丞に、四書五経までしっかりと教えてやると、父親も大切なお客さまだ、と思って、随分と親しくした。 【“狗張子 其の一(前編)”の続きを読む】
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